白球追いかけて
 信号が変わり、前にいた二人は走って横断歩道を渡っていった。すぐに車やバイクが流れはじめ、その姿は見えなくなった。
 あれってホンマにケメやったんかなあ。
「ジュン君、あのサンタ見て。メッチャおもしろい」
 ぼぉ~とした意識が元に戻る。
「うん?おう。ホンマやな」
 しばらく街を歩き、時間になったので、ジュースを買って映画館に入る。チケットを見ながら席を探す。
「え~と」
 ジュースを持っていたのでチケットは二人とも指に挟んでいた。席の番号を見ようと、指を少しずらすと、チケットは「スッ」と、他の席の下に落ちてしまった。
 まぬけに、
「すみません~」
 と謝りながら、そこに座る観客の席の足元を探す。
「あった」
 B-五二と五三番。
 席に座ると、映画がはじまる。
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