白球追いかけて
 骨折してからちょうど一年が経つ高三の七月。夏の甲子園地区予選で、シータがいるトウサ高校と当たるかもしれない。
 抽選でうちの高校はシードを引き当て、一回戦で勝ったチームと対戦する。その二校はトウサ高校と南校。勝負ははっきりとしていた。
 はっきりとしているにもかかわらず、トウサ高校の試合がはじまる何日も前から、ゲームセットまで、食い入るように結果が気になった。自分のチームはそっちのけにして。
 トウサ高校と当たるのがはっきりしていたのに、体の底から違和感が噴き出してくる。ドキドキした緊張感。未来を暗示させるようなものだった。まだ始まりも終わりもしてないのに、一足早く感じ取ってしまうこの感覚。少しの間だけ、いや、大げさに言えば何年も時が速く進んだ気がする。
 
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