白球追いかけて
 ケメはいつもオレが降りる二つ前の駅で降りるのだが、この日はいつもの駅で降りなかった。オレが自分の駅で降りると、ケメが電車から飛び出してきた。
 そして、
「ケメ」
 と声をかけると、ケメは立ち止まり、オレの目の前で崩れるように泣いた。
「どうしたんや?」
 久しぶりにケメに声をかけた気がする。そしてその問いかけに、ケメはなにも返事をしなかった……。
 どうしていいのか分からない気持ち、そして、この場にいるオレが、ケメという一人の「女のコ」にとって、支えになってやらなければという気持ち。
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