白球追いかけて
「アウト」
 審判が親指を立てて高々と右腕を上げた。盗塁は失敗。白いユニフォームが情けなく土まみれ。
 その得点は、十一対〇。結果が見えているのにやり続けること、これほどダルいコトはない。自分の前にはキャッチャーの狭間、背中の後ろにはショートの安川はじめ、七人の高校球児が、今しかないような青春をかけている。そんな重圧をオレは冷ややかに感じていた。ココロの中では早くピッチャーを代えろと監督に無言の指示を出していた。
 五回の表まで来て、監督はやはりピッチャーを代えない。カッとした気持ちを抑え、少し冷静になってみようと努力する。今さらながら、うちの高校には控えピッチャーなどいないコトを思い出す。
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