白球追いかけて
 オレの意識が遠のこうとしていたとき、すっげえオーラがオレを我に返らせた。シータがバッターボックスに立っていた。この試合で何回か対戦したしたのに、懐かしい、なんとも言えない感覚がオレの体をうならせる。
 一球め、力んだオレが投げた球は、シータの内角をズシリと攻める。
「ボール!」
 審判の声が響く。
 二球めも同じところに投げた。シータはバットをまったく振ってこなかったが、判定はストライク。
 この二球で、オレは直観的にシータがど真ん中に的を絞っているのだと感じた。やはりどこまでもまっすぐな野球ヤロウだったが、このシータのまっすぐな気持ちに応えるわけにはいかず、三球めは外角の低め。シータのバットは止まり、またボール。
 カウント一-二。やはりど真ん中狙いだなと確信した。
 三年ぶりの対決で、シータは真っ向勝負を望んでいるようだ。しかし、オレの性格は、もう一度同じ外角に投げさせた。やはりボール。
 カウント一-三。
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