月・影
光は、そう呟くと、自分の部屋にある棺桶に目をやった。




「これって……こっちの世界でも使えるのか?」




光は棺桶の蓋に手をかける。




「やっぱり……だめか?」



棺桶の蓋はびくともしなかった。




光は棺桶を見つめながら、月の世界に残してきた丈のことを思い出す。




―丈はまだ、ヴァンパイア狩り続けてんのかな。




「それよりあの女の子誰だったんだ? なぜ、俺を狙ってきたんだ?」




「私に何か用?」




光はその声に後ろを振り向いた。




「甘いんじゃない? こっちの世界に来れば私が追ってこないと思ったの?」




「ちっ。」




光は舌打ちをすると、棺桶に手を伸ばした。
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