思い出のフィルム
「色々な店がありますね。あ、あそこにスープBARがありますよ。ちょっと見てみませんか?」

優子が指さした先には様々なスープの入った鍋が陳列された店があった。

ハーブが添えられたコンソメスープ、濃厚はコーンクリームスープ、枝豆をすり下ろしたグリーンクリームスープなど、様々な種類のスープが売られていた。

他の色々な店は子供が店番をしているところが多かったが、そこで商売をしていたのは、かなりの年を召した老婆だった。

「とてもいい香りがします。カレースープとか中華スープもあるみたいですね。買ってきてよいですか?」

私は思った。

高校生にお金を出させる社会人も情けない限りだと。

「待て、私が...」

そう言い掛けたとき、優子は振り返った私の口元にひとさし指を当てた。

「私が興味があったから買ってきます。植草さんも興味のあるものを買ってみて下さい」

優子はそういうとスープ屋の前まで歩いていってしまった。

私は近くにあった、ロールパンのようなものを串揚げにしている店に目をやった。

でもなんとなくだが優子のいるスープBARの方に歩いていった。

優子は老婆の目の前でスープを見ていると、突然老婆が声をかけてきた。

「この店自慢の、アクゥアバァイザァーはいかがかね?」

すると優子は目を光らせてこう言った。

「それはこの店でしか飲めないスープですか?」

すると老婆はニヤリと笑ってゆっくりと二回頷いた。

「アクゥアバァイザーは癖はあるがとっても体にいいんじゃ」

すると優子は迷うことなく財布を手にとった。
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