思い出のフィルム
あれは週初めの月曜日だった。

その日も新しい特集を企画するために取材に付き合ったり、デスクで試行錯誤したりを繰り返す予定だった。

端から見れば働きざかりの若者が、あちらへこちらへと現場に飛び回り、生き生きと仕事をしていると思われるだろう。

実際のところはスケジュールに追われ、果ては下手くそな写真を上司に見せてため息をつかれる毎日だった。

この業界にとって疫病神としか言えない私だが、たった一つだけ取り柄があった。

それは文章表現をするための想像力だ。

子供の頃は世界の隅々まで探検したいと思っていた。

アメリカの砂漠にそびえ立つ大地が作ったモニュメントや、カナダのオーロラ、
それに人々が作り上げた謎の遺跡にも興味がある。

だから行きたい場所を鮮明に文章という形に残しておきたかった。

文章を書き出すと、そのとき思った自分の気持ちが素直に現れて、読み返す度に鮮明な情景描写として蘇ってくる。

時には自分が尾鰭背鰭(おびれせびれ)つけた情景に、まるで私が立ち入って都合のよいお話をつけることもある。

そんな話を飲み屋でしたところ、上司の提案で雑誌に投稿することになり、今に至る。
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