思い出のフィルム
気づけば私は通勤列車に揺られて目を閉じていた。

いつも会社に行くときは自問自答を繰り返し、自分の人生において何か楽しいことを模索していた。

そして気づけば自分の世界に入り浸り、最後はサラリーマンとして生きることに疑問を感じて終わるのだ。

そしてこの日は自分で想像した上司に叱責されて、飛び上がるようにおきた。
正確にはいつの間にか眠りこけていたのだ。

会社の通勤時には時々だが、想像の世界に深くシンクロしすぎて、夢の世界へと繋がってしまうこともある。

この日は運も悪く、自分の頭が描き出した上司の叱責で目を覚ましてしまった。

普段は世間の目もあまり気にも止めない方だが、さすがに今回は辺りを見回した。

そして誰もいないことに気づき、ホッと胸をなで下ろした。

しかし私は次の瞬間、こう思った。

（あれ？誰もいない？）

そして私は窓の外を見てしばし呆然とした。

太陽の光を浴びた彩り豊かな緑の山肌が窓の外をゆっくりと通り過ぎていった。

「え」

私は思わず声がでた。時計を見るとすでに１０時を回っていた。

その日は８時までに出社して、先週までの遅れを取り戻すつもりでいた。

そして今、通勤列車で完全に寝過ごした挙げ句に、列車が走っている位置すらわからなかった。
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