トナリの王子サマ
すると、一稀は観念したように離れた。

そして、陽をにらみつけてその場を去って行った。


去る時に、陽の耳元で何かをささやいていたが、聞こえなかった。

何を言っていたんだろう?


ささやかれた陽は、すごく難しい顔をしていた。

振り返って私を見ると、いきなり"ごめん"と謝った。



「えっ、ちょ…」


陽はそのまま保健室を去って行った。

私は陽の背中を追いかけることもできずに、ただ…立ち尽くしていた。


―それから…なぜだか知らないけど。

私と陽は一切話をしなくなった。


陽は目すら合わせてくれない。

こんなことは初めてで…ただ、つらかった。


その日も陽と話をしなくて、家に帰った。

< 25 / 179 >

この作品をシェア

pagetop