トナリの王子サマ
その夜、母さんが作った料理を、兄貴が持っていくことになった。

兄貴はすぐに帰ってくると思った。

けど、帰ってこなくて…



玄関の扉をうすく開けると…

伊吹が兄貴の洋服を顔を真っ赤にしながら引っ張っていた。


……そういうことかよ。

アイツは兄貴が好きなんだな?


兄貴はそのまま、伊吹の部屋に入って行った。

俺は虚しさがこみ上げてきた。


俺を頼らないのは、兄貴がいたから。

兄貴に頼りたかったから…?


俺と仲良くしようとしてたのも、兄貴が…


考えれば考えるほど、辛くなってくる。

俺は伊吹のことを、何も考えないでただただ自分のことしか考えてなかった。

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