誘拐 ―おまえに決めた―
― 痛いのはどこか
その質問に、私は答えない。
そして答えなくても、今の私を見たらリクは正解を見つけるだろう。
勝手に。
とても癪だけど。こんな誘拐犯に。
今の私は、ただただ俯くだけしかできないから。
涙は見せたくない。
私の皮膚ににじむ赤を見ながら、リクは小さく小さく呟いた。
「・・・・・・俺が自由にしてあげる」
多分、リクは気づいていない。
その独り言が私にも聞こえていることを。
だから私もリクに見えないように首を振る。
(私、そんないい人間じゃないんだよ)