誘拐 ―おまえに決めた―
「・・・・・・ん」
ぺろり、とリクがリク自身の唇を舌で舐めた。
唾液を絡めるように。
ぺちゃり
私の闇とは不釣り合いに、水気を含んだ卑猥な音が響く。
頭が、
柔らかい唇が皮膚を流れる感覚だけに支配される。
何も考えたくない。
ただこの、皮膚感覚に身体をまかせたい。
傷を通り過ぎて、私のつま先にリクはキスをした。
ついばむように。
「痛いの痛いの飛んでけ」
立ちあがったリクは、私の髪を撫でた。
優しく、
しないで。