誘拐 ―おまえに決めた―
ここだけ時間が止まったよう。
この部屋は外界と遮断された危険な空間なのか、それともこの部屋だけが今の私には安息の地なのか。
外にいる他の誘拐犯たちからも、お父様からも、そして警察からも私は捕らわれていない。
私は危険に麻痺しているのか。
アンバランスな静謐がとりまく。
私とリク二人きりのやり取りだけが続く閉鎖された部屋。
リクは、緩慢に私の腕に結わえられた縄を外した。
「次は腕、拭くよ」
「あ、うん・・・・・・」
その時、
『パン!!!』
しじまを破る音が響き渡る。