誘拐 ―おまえに決めた―
9章 銃声
「えっ・・・・・・」
聞き覚えのある不吉な音。
銃声だ。
リクの顔が強張っている。
リクは眉をひそめドアを見つめたまま、私と目は合わない。
無意識にリクを見ている自分に気づき、私は驚く。
不安なとき、人は人を見る。自分だけの恐怖や不安を共有するように。
その相手が、リクであったという事実。
そんなに信用している意識なんてなかったのに。
「下がって」
声を落として、リクは言う。
私は動けない。