誘拐 ―おまえに決めた―

左側にあるドアに向かう途中、何かに躓いた。

「痛っ」

私の鞄だ。


中に本当の母親のものであるらしいお守りが入っている。

こんなときだからこそ妙に離れがたい気持ちで、とりあえず持ち上げる。

妙に鞄が重たい。



「そんなものいいから行け!」

「おまえら、絶対殺してやる」

リクとトイチの怒声が交差する。


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