誘拐 ―おまえに決めた―

頭部に向かって、力いっぱい木を振りかざす。


「ちょっ。マイ、待てよ。俺だよ」


聞きなれた声。

でも動き出した腕はもう止められない。



木はその人影に直撃する。


が、簡単にパシャリと根性のない湿った音を立てて折れた。



「あ、あれ?」

「マイ、こんなので戦おうとしてた?」



雨で綺麗な金髪が濡れたリクが立っていた。




「リク・・・・・・」


「捜した」


かなり走ったのだろう。

肩で息をしながら、リクが近づいてくる。


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