誘拐 ―おまえに決めた―
なんでだろ。
なんか涙が出そう。
迷子になって母親を見つけた子供のような気持ち、経験のない私にはよくわからないけれど。
「そんな安堵した表情見せられたら困るな」
「えっ」
さては、どこかにトイチが?
「罠かもしれないだろ。少しは気をつけろ」
そう言いながら狭い穴倉に入ってくる。
「何勝手に入ってきてんの?」
そう言われたからにはこっちだって反撃するしかない。
「あ。じゃあ、おじゃまします」
「そういうことじゃないよ、リク。ってか、狭!! きつっ!」
「詰めてよー、詰めてよー」
何考えてるの、こいつ。