誘拐 ―おまえに決めた―
「マイ、肩震えてるよ。寒いだろ」
「別に」
「出たよ、マイの『別に』」
全て見透かされているようで、なんとなく寒いと言いたくない。
そもそも、私が寒そうに見えるのはリクじゃなくとも明らかなのだけれど。
「ここ、おいで」
リクが自分の胸のあたりを指す。
「いいよ、そんなの」
「まだ人質なの忘れてない?」
「まだそうなの!? どっちかというと、リクも人質寄りじゃない?」
「いや、俺は誘拐犯。あくまでも」
なんかよく分からない。