誘拐 ―おまえに決めた―

肩に温かい重み。


「じゃあ、これ着て」

「あ・・・」

リクは自分が着ていたジャケットを脱いで、私に着せた。




なんで、なんでリクはこんなことを私にするのだろう。


「いいのに」

「マイは素直じゃないね」



そう言いながら、私がジャケットを脱がないようリクは私の肩を押さえた。


妙に気恥かしくて、ジャケットを脱ごうと身体をよじると、リクの腕が目に入った。

鋭い刃物で切れた、一直線の痕。



「リク、血が出てるよ」

「ああ。これね」


リクは何事もないように答える。

ジャケットをよく見ると、同じところが切れている。


トイチ、か。

やったのは。
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