誘拐 ―おまえに決めた―
こんなの、自分からしたことない。
そういえば、私、自分から男の人に近づいたことってないな。
リクの胸と私の背中が密着する。
しかも私は薄着なものだから、背中の感覚を敏感に感じる。
まずい。
心臓が想定外に高鳴っていて、落ち着かせようと思えば思うほど急スピードを出す。
なんとなく、リクにそれは知られたくない。
なんとなく・・・・・・。
でもそれ以上に速いスピードの車が、私を追い越していく。
背中越しにリクの鼓動が、私より早いテンポで伝わる。
あんなことしておいて、何を今更照れてるんだろう。
リクってよくわからない。
私はおもわず叫ぶ。
「何、緊張してんの!」
「そっちこそ!!」
バレてたか。