誘拐 ―おまえに決めた―
リクの髪から滴る水滴が首筋にかかってくすぐったい。
振り向くと、濡れて束になっても綺麗な髪だと思う。
「何見てるんだ? 俺、顔に何かついてるか?」
「いや、特にないけど」
ただリクがどんな表情をしているか気になっただけ。
そんなこと言えない。
言いたくない。
「マイ、だいぶん血行よくなったな」
「うん」
「さっきは唇真っ青だったから、それを理由にキスしちゃえばよかった」
リクは視線を外しながら、悪戯っぽく言う。
「何それ」
意味が分からない。
「まあね」