誘拐 ―おまえに決めた―
「どうぞ」
突っ込みどころが多いけれど、私はしぶしぶ返事をする。
「あの、あのー」
「何、リク」
「もう一回キスしてもいいですかーーー!!!」
その響き渡る声と同時に、私の拳がリクに直撃したのは言うまでもない。
その反射で、リクは木の根に頭を打つ。
「てめーは、木とでもキスしてろ。この誘拐犯が」
リクがまたもオカマ口調で「この子ったら酷いのよ」とか何とか騒いでいるうちに、リクの身体から伝わる緊張の濃度が薄まっていく。
「冷たい。実に冷たいよな。マイは。しかしそこがたまらん」
「どっか行け。この変態が」
こっちが照れるじゃん。
話、話を変えないと。