誘拐 ―おまえに決めた―

「そんなことより、リク、これからどうすんの?」



「えっ。さっきの話はーー?」

リクが甘えた声で、後ろから私の顔を覗き込む。

距離が近い。吐息の湿度を敏感に感じてしまう。



「忘れた。何のこと」

リクとの距離が近いとなんか変な感じになる。

その慣れていない感情を、私は持て余す。



「キ・・・・・・」


近づいてくるリクの顔全面を、手でぐっと抑える。

私の掌は、若干リクの鼻にめり込んだ。


「痛っ! 鼻痛い!」

腕にあんな怪我をしても平気なのに、なぜこんなことでピーピー騒ぐんだろ。



わざとか、わざとだな。リク。

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