誘拐 ―おまえに決めた―
「ちゃんと考えてるんじゃん」
私は一応、褒めておく。あえて偉そうに。
「まあな。ただトイチの行動次第。雨次第ってとこか」
「雨が止んだら?」
「いや、雨が降っている方がいい。今みたく、足跡が消えるからな」
「そうだね。リクは私の足跡を追って?」
リクがどうやって私を見つけたのか不思議だった。
「そうだ。でもその足跡もこの雨じゃ跡形もないだろう」
「うん」
「できれば早く移動したいがまだやつはこの辺にいるだろうし、今の体力では追いつかれる」
リクは腕の傷を押さえた。
「でもマイが止血してくれたから、少し休めば大丈夫だよ」
目を細めて私をみる。
でもリクとの会話は、私が危機的状況にいることを改めて思い出させた。