誘拐 ―おまえに決めた―
「んっ」
リクの指が這うように私の足を撫でた。
「足、洗ったのにまた汚れちゃったな」
「リクのせいで、私、靴も履いてない」
あの部屋で足を拭く際に靴を脱ぎ、そのままだ。
「足、見せてみろ」
私の足は泥にまみれ、そして所々小枝でできた切り傷ができていた。
「痛くないか?」
「痛くない。っていうか、そんなの気にしてる余裕なかった」
ただ走る、そのことしか考えられなかった。
リクが、そう言ったから。