誘拐 ―おまえに決めた―
「マイは強いな」
「強くなんて、ないよ」
「・・・・・・そんなことない。マイはいつだって強い」
雨の音に耳が慣れてくる。
滴が落ちる音が気にならなくなると、あたりには静寂と闇が広がっているのを感じる。
居た堪れなくなった私は、リクに問いた。
ずっと気になっていたことを。
「リク。ずっと思ってたんだけど、リクは私の何を知っているの?」
「それはまだ教えられない。無事に逃げ切ったら教えてやる」
「誘拐犯が約束守るとは思えないな」
「いいね。そうやって疑うことが大切。ただおまえ、前はそんな獅子舞みたいな名前じゃなかっただろ。それだけ教えてやる」
心臓が、ずきんと跳ねる。
なんで、なんで知ってる?