誘拐 ―おまえに決めた―
「そういえば」
私はあることを思い出し、ポケットを探る。
「この鍵、何」
半ば確信を持っていたが、その答えはリクの言葉で事実へと変わる。
「金が入ってる、トランクの鍵だ」
「なんでこんなの・・・・・・」
「入れたのは俺だ」
その一言で、私の無意識下でまたリクを信用してはいけないと警告が鳴る。
「俺は銀行強盗だ。そんないい奴じゃないんだよ」
私の心を見透かしたようにリクは冷たく笑う。