誘拐 ―おまえに決めた―
リクが掘り進めるにつれ、真黒なトランクが姿を見せた。
「リク、それ・・・・・・」
「そうだ。マイの持っていた鍵はこのトランクの鍵だ」
「マイ、手伝って」
土だらけのトランクの鍵穴を木の棒で穿る。
リクが鍵を差し込むと、ぎぎっと嫌な音を立ててトランクは開いた。
ああ、予想通り。
札束。
そこには大量の札束が入っていた。
それはとてもリアルで、誰かの命よりもこんな紙の束が重いのか。
でも私は父親を殺してから、とりあえずお金を下ろして逃げようとしてたんだっけ、と自分でもよく分からない気持ちになる。