誘拐 ―おまえに決めた―
トイチの「ぶっ殺してやる! おまえら二人ともな」という笑い声に消されない位大きな声で。
リクは一瞬眉をひそめたと思うと、突然私を背負う。
「えっ! いいよ!」
「いいから、黙って乗ってろ!!」
リクは声を荒げる。
リクは私を背負ったまま、走り続ける。
リクの呼吸がさっきより明らかに荒い。
「リク、無理しないで」
「俺が無理しないと、お前が死ぬだろ!」
「いいよ。別に別に」
「別にじゃない! お前が死んだら俺が困るんだよ!」
びっくりするくらい大きい声で叫ぶリク。
なんで・・・。
なんで・・・。
「落ちないように捕まってろ」
私は腕をリクの首にぎゅっと絡ませる。
「よし、いい子だ」
リクは振り向き笑顔を見せると、スピードを上げる。