誘拐 ―おまえに決めた―
「トイチ、トランクは見つけたか?」
「それはお前が隠したんだろ!!」
「見つけてないってわけか」
リクとトイチのやりとりからは、話が見えない。
「トランクの在処は俺が知っている」
「だから、その女を殺すのはやめろってか? 何の意味がある。その女から金も取れそうにないし、どうでもいい。トランクの場所を教えろ!」
「トランクはトランクだけではダメだろ? あれは特注品で、金庫同様。壊すことはできない」
「ああ、鍵が必要だな。リク、おまえ・・・・・・」
トイチの顔がみるみる怒りに満ちてくる。
「トイチ、鍵が欲しいか。こいつに鍵は飲みこませた。胃の中だ」
リクはこいつと言いながら、私を指さす。