誘拐 ―おまえに決めた―
そんな事実は全くない。
現にお金は私の鞄に入っている。
トイチは、リクが私の鞄にお金を移し替えたことを知らない。
「くそっ」
トイチが地団太を踏む。
何かを決意したように、トイチは私へ向けた銃の引き金に指をかける。
「いいのか」
リクが息を飲む音が聞こえた。
「もうどうでもいいよ」
トイチが答え、近づいてくる。
撃たれる!
そう思ったその時、リクが私を崖から突き飛ばす。
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