誘拐 ―おまえに決めた―

睨みつけるように、まじまじと見ている私のことなどお構いなしに、男は状況にそぐわない優しいトーンで話し続ける。



「立てる?」



ゆっくりと、ゆっくりと、地面に立たされる。


誘拐犯とは思えないくらい丁寧な動き。





「な、何なの? 殺すの?」


やっぱり怖い。




「俺は、人は殺さない」


どの口をしてそんなことを言う。




「必要がなければ」



……やっぱり。



< 25 / 225 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop