誘拐 ―おまえに決めた―
6章 椅子とその部屋
「おい! 大丈夫か」
一瞬気を失っていたみたい。
ぺたぺたと、リクの手が私の頬を打つ。
「別に。何でもない」
「何でもない、って顔じゃないだろ。真っ青だぞ」
「うるさい」
「おい」
リクが私の腕を掴もうと手を伸ばす。
それに負けない速度で、シャツを脱がされる際に自由になった腕を、リクを振り払うように上げた。
その瞬間、私の身体ががくりと傾いたのを感じた。
視界は床へ。