誘拐 ―おまえに決めた―
場にそぐわない声が響く。
「マイちゃんは、シャワーは熱い派?温い派?」
ウエイターのように洗面器を持ったリクが現れた。
ビシッと立つその姿は、一流のウエイターかはたまた執事か。
黒い洋服も相まって、奇妙なことにとても似合っていた。
「はぁ」
「はぁ、じゃなくてさー。どっちどっち?」
「・・・・・・じゃあ、熱い派」
「残念! 熱いお湯はここにはありません!!!」
「は!?」
「ちなみにシャワーもありません!!!」
(なんだ、このやろう!)
何を自信満々に言ってるんだか。