誘拐 ―おまえに決めた―
「足出して」
その辺に転がっていた、木の箱に足を乗せる。
リクはまるで求婚する王子のように、私の足元に片膝でしゃがみこむ。
「失礼します。シンデレラ」
リクは完全に状況に合わない発言を、状況に合わない満面の笑みでしながら、下から私を見上げる。
・・・・・・やっぱり違和感がある。
どこかで見たような気がするけど。
でも私の混濁した記憶なんて、当てにならない。
きっと、どうせ思い出せない。