誘拐 ―おまえに決めた―
「痛っ」
私のふくらはぎを縦に流れる大きな傷に、リクの指がかかる。
「ごめん」
そこはお父様が、最後に私につけた傷。
まるで足枷。
逃げられないように。
「血が出てる」
うっすらと血がにじむ傷跡を辿るように、リクの長い指が伝う。
ゆっくりと。
「んっ・・・・・・」
リクが私の傷口に触れたため、思わず声がでてしまう。
痛さによる不快感か、それともまた別の感覚なのか。
リクの口腔の動きとともに、戸惑いが水紋のようにじわじわと心の中に広がる。