誘拐 ―おまえに決めた―
私の頬に、リクの手が触れる。
「それにキャミソール越しに見える背中も、傷だらけだぞ」
「・・・・・・転んだ」
子供のような嘘をついてしまう。
「転んでつく傷じゃないだろ。こんな見えないところばかり」
「転んだ」
「・・・・・・そうか」
リクは、小さくため息をついた。
いつまで経っても本当のことを言いそうにない私に。
気のせいだと思いたい。
私を見上げるリクの目が、少し潤んでいたように見えたのは。
二人とも何も発せず、ただお互いを見ていた。
目を、そらせない。