Murder God
Prologue
殺して下さい、と彼女は言った。

私を殺して、と。

縋るように男の目を見た。

もう疲れたの嫌なの死にたいの。

泣きそうな声で吐き捨てた。

男は今まで幾人もの人間を殺してきたが、何故か彼女は殺したくはなかった。

殺して下さい、と彼女はもう一度言った。

そこでようやく男は気付いた。

似ているんだ、彼女は。

──昔守れなかったあの子に。

でも、ただ似ているだけ。あの子ではないんだ。

男はようやく彼女に銃口を向けた。

引き金を引く瞬間、彼女は微笑んだ。気がした。
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