天国への階段 ―いじめ―
「この刺繍、誰かが縫ったの?
それとも、最初から?」
私がそう言うと、なぜかまりあは優しく微笑んだ。
「愛夕からの誕生日プレゼント」
……そうか。
だから、まりあは微笑んだのか……。
「じゃあ、私が借りたら悪いんじゃないかな……?」
ふと思い立って、まりあに言った。するとまりあは、
「自分の作った物が役に立つ方が、愛夕だって嬉しいでしょ?」
と言った。
役に立つ。必要とされる。
なぜか、少しドキッとした。
自分が一番欲しいと思っている物だったからだ。
自分ではハッキリと意識していないものの、心の片隅で、ひっそりと、でも強く思っていることだ。