天国への階段 ―いじめ―
どんなことがあっても、
他人を殺すことはしない。
たいそれたことを言うわけでもない。
ただ、怖くて、弱いからだ。
人の命を奪うほどの勇気がない。
それに、殺した後、自分がのうのうと生きていける気がしない。
一生、その罪を背負って生きていくなんて私には無理だ。
幾度となく、私はカッターナイフを握った。
自分の手首を狙ったこともあるし、麗子の心臓を狙ったこともある。
けれど、私も麗子も、今、生きている。その体にカッターナイフで傷がついたことはない。
握る手が震えるのだ。
痛みが怖い。人を殺めるのが怖い。
怖気づいて、刃をしまう。
勇気の無さに、苛立つ。
自分が大嫌いだった。