詩吟う日に仰ぐ空
優奏唄


音が聞こえた。

零れるような粒のような、音。

何処からでもなく、聴こえた。


耳を傾けてみると、唄が聴こえた。

丸くてふわふわしてる声。

なだめるような諭すような唄。


目を閉じると、姿が見えた。

小さくて穏やかな姿。

私を呼んでいるようだった。


手を伸ばすと、届かず消えた。

優しい風に吹かれて消えた。

跡形もなく、残されたのは私。

置いて行かれたのは現実の狭間。


心に気を向けた。

大丈夫って問いかける。

ヒトの温もりがあった。

それが答え。


古ぼけ、色褪せ、遠くて、届かない、

見えなくて、触れなくて、答えない。


現実と唄だけ残した。


あなたはもう、遠いヒト。


(10/01/22)
< 60 / 78 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop