詩吟う日に仰ぐ空
優奏唄
音が聞こえた。
零れるような粒のような、音。
何処からでもなく、聴こえた。
耳を傾けてみると、唄が聴こえた。
丸くてふわふわしてる声。
なだめるような諭すような唄。
目を閉じると、姿が見えた。
小さくて穏やかな姿。
私を呼んでいるようだった。
手を伸ばすと、届かず消えた。
優しい風に吹かれて消えた。
跡形もなく、残されたのは私。
置いて行かれたのは現実の狭間。
心に気を向けた。
大丈夫って問いかける。
ヒトの温もりがあった。
それが答え。
古ぼけ、色褪せ、遠くて、届かない、
見えなくて、触れなくて、答えない。
現実と唄だけ残した。
あなたはもう、遠いヒト。
(10/01/22)