澤木先生のサイアクな日曜日
長い長い日曜日が、やっと終わった。
澤木はクリニックの門扉を閉じるため、外へ出た。
濡れた芝生にオレンジ色の日差しが降り注ぎ、キラキラと輝いている。
白衣のボタンを外しながら、澤木は深呼吸した。
はぁ・・・
久しぶりに息をしたような気がする。
それくらい、すさまじい一日だった。
朝から食事も取っていない。
考えてみると、水分補給すらしていない。
「医者の不養生」とは、まさにこのことだ。
待ち疲れた患者の赤ちゃんに、泣きわめかれるし。
鼻から飛び出したスイカの種が、顔に張り付くし。
先週ワックスをかけたばかりの床に、土足で上がられるし。
どこかに雷が落ちて一瞬停電したおかげで、入力途中だった電子カルテが真っ白になるし。
ベッドは泥だらけだし。
女子高生には、殺されそうになるし。
休む間もなく、明日も仕事だし。
アユミさん風に言えば、「チョーサイアク」だな。
凝ってしまった首をさすりながら、澤木は苦笑いを浮かべた。
ほのかに涼しい風が、顔をなでる。
それに誘われるように上を見上げた澤木が、思わず声を上げた。
「あ」