澤木先生のサイアクな日曜日
…話が、全然聞き取れないな。
色々な人の話を、聞き取れるようにならないと。
私も、まだまだだな。
澤木は苦笑いを浮かべながら、ベッドの上の「アユミさん」と向き合った。
顔面真っ青の「アユミさん」は、薄目を開けてぼんやりと、澤木を見ている。
「アユミさん、分かりますか?」
「・・・」
アユミの唇が、わずかに動いた。
「アユミさん?」
「・・・チョーサイアク。マヂ殺す」
うら若き女子高生から発せられた、とんでもなく物騒な発言に、澤木は思わず言葉を失った。
「・・・はい?」
「ウチのパンツ見たっしょ?!もーサイアク!ドスケベ、ぶっ殺す!!」
さっきまで自分で歩けなかった人とは思えないほどの威勢のよさだ。
澤木は、明日の朝刊の一面に
「開業医、女子高生のパンツ見て殺される」
という文字が大きく踊っているのを想像した。
それだけはなんとか回避したい。
「み、見ていませんよ」
・・・見えただけです。
「んじゃなんで足に枕してあんだよ!そっちからパンツ丸見えでしょーが!」
膝上20センチのスカートを履いておいて、パンツが見えるもなにもないようなものだが、今のアユミに何を言っても無駄だろう。
「みんなー!!こいつ変態、助けろ!!」
アユミは、出て行ったばかりの賑やかな友人たちに助けを求めた。
「アユミ、どした?」
「こいつ、ウチのパンツ見たんですけど!」
友人たちは、顔を見合わせる。
「てか・・・」
「アユミ、駅のまん前でぶっ倒れたっしょ?」
「だから・・・」
「周りにいた人ら、みんな見てるん・・・じゃね?」
「・・・LOVE☆DYNAMITE」
最後の一人が、アユミのパンツの後ろに書いてあるデザイナーの意図が不明なメッセージを口にして、アユミにとどめを刺した。