澤木先生のサイアクな日曜日
「どうですか?アユミさんの様子は」
隣の診察室で患者を数人診てから、澤木は処置室のドアをそっと開けた。
「ダメですね。さっきからずっと、こんな調子で」
アユミに付き添っていた看護師の桜井が、ため息をつく。
「うぅ・・・パンツ見られた・・・」
アユミはさっきから、公衆の面前でパンツをさらしたショックから立ち直れないでいる。
熱失神の治療はもう終わっていて、あとはアユミが立って歩ければもう帰ってもいいのだが。
アユミは枕にかじりついて、ベッドの上で膝を抱え込んだまま。
「もうサイアク!マヂ死にたいし」
職業柄、他人のパンツを見慣れている澤木にとって、パンツとは「下半身に履く、三つあるいは四つの出入り口がある下着」という定義でしかない。
しかしこの子にとっては、見られたら命をもてあそびたくなるほどに、大きな影響を及ぼす重要な被服なのだ。
あぁ、こんなことも気づかないなんて。
澤木は、医業に熱心になるあまり、人々が抱く一般的な感覚を忘れてしまっていた自分を、心から恥じた。
「アユミさん、すみません。私の配慮が足りませんでした」
最初からパンツが見えた状態でやって来た救急患者に対して、何をどう配慮すれば良かったのかはよく分からないが、澤木はとりあえず謝った。