S的?遊園地
(ずっとココにいても、仕様がないな。)

私はそんな気持ちを持て余したまま、お手洗いを出た。
扉を閉め客席への廊下に体を向ける。

「おい。」

その声に反射的に振り向いた。
お手洗いより更に奥。自動販売機コーナーの入り口の壁により掛かる、平畠さんの姿がそこにはあった。

「えっ?平畠さん?」

スーツのジャケットを脱ぎ、シャツの裾を肘までめくり、ネクタイを緩めてシャツのボタンをいくつか外している。
その、着くずした格好でさえ、様になっている。

「あの…。」

言葉を発する前に、平畠さんは私の腕を強く引っ張った。
平畠さんが、いつもの様に眉間にシワを寄せている。

(私、何かしたっけ?)

いつもの癖で、とっさに怒られる理由を探した。
軽い衝撃で我に返ると、平畠さんの両腕は私を中に捕らえる様に壁に付けられていた。
良く見ると、廊下から横に入った自動販売機コーナーの奥の壁際だった。

「平畠さん?」

その眉間のシワは、どことなくいつものそれとは違う様な気がする。
しばらくの沈黙の後、平畠さんはゆっくりと視線を私に合わせた。
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