S的?遊園地
どれくらいの時間そうしていたのだろうか?
平畠さんの口付けは止まろうとしない。
気付けば、片方の手は私の腰を支える様に添えられていた。
もう片方の手は、私の髪をかき上げる様に掴む。
(息…出来ない。)
ボーっとしたまま、平畠さんに身を預ける。

「可奈子ぉ!」

ふと聞こえたその声で、段々頭がクリアになっていく。
彩の声だ。

「可奈子?二次会カラオケだって。行くでしょ?」

お手洗いの扉を開ける音と共に聞こえてくる声に私は目を開けた。
どうやら彩は、私がまだお手伝いにいると思っているらしい。
平畠さんも目を開け、私と距離を取るように体を離していた。

「行けば?」

顔を見ても、その表情からは、心の中まで伺い知る事は出来ない。
私はまだボーっとする頭で、平畠さんに言われるまま自動販売機コーナーから出て行った。
動く度に平畠さんの甘い匂いに包まれる。
(何の香水かな?)
彩の後ろ姿を追いかけながら、そんな事ばかり考えていた。


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