S的？遊園地
「落ち着いたか？」

そう言って、平畠さんはテーブルに麦茶の入ったコップを二つ置いた。

「はい、すみません。」

私は床に敷いてあるカーペットの上に正座をして、小さくなっていた。
穴があったら入りたい。
正にそんな気分だった。

パン屋さんの前で泣いてしまった私は、平畠さんに腕を掴まれてこの部屋に連れて来られたのだ。
ティッシュを箱ごと持たされた私は、ひとしきり泣いた後やっと冷静さを取り戻していた。
恐らくここは平畠さんが一人暮らしをしているマンションだと思う。
平畠さんは、あからさまに不機嫌そうな顔をして、ベッドに腰掛けた。

「全く、公衆の面前で泣くやつがあるか。」

腕を組むと、私をジロリと睨む。

「...すみませんでした。」

私は、体をさらに小さく縮めた。
公衆の面前で泣いてしまった事も勿論だが、平畠さんに思いをぶつけた事や、(多分)平畠さんの家に上がっている事も恥ずかしい。
(きっと、メイクも取れて、酷い顔になっているんだろうな。)
逃げ出したかったが、急に襲って来た緊張感で、上手くこの状況を処理する事は出来ずにいた。

「妙な噂が立って、あのパン屋に行けなくなったらお前のせいだからな。」

「すみません。」

私は、うつむいたまま力なく答える。

平畠さんの言う事は正論だと思う。
女の涙がズルいのも分かっている。
でも、もうチョット気持ちを推し量って欲しいものだ。

小さくなったままそんな事を考えていると、平畠さんは大袈裟にため息をつくと、組んでいた腕を解いた。

「で？お前は、俺の何を知りたいんだ？」

その言葉に驚いて顔を上げると、至って真面目な顔をした平畠さんがいた。


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