S的?遊園地
「あの日、何でキスしたんですか?」

私は、やっとの思いで言葉に出来た。
唇が微かに震えているのが分かる。
平畠さんの顔を見ると、目線が答を探す様に流れる。

「...あれは、悪かった。」

その一言に、体中に大きな衝撃が走る。
『お酒の勢い』なだけなのだろうか?
やっぱり、聞かなければ良かったと今更ながら後悔した。
私はまた、涙が出そうになり下を向いた。

「アルコールのせいにするのはズルいという事は分かっている。」

もうこれ以上、平畠さんの話しを聞いているのは辛過ぎる。
泣いてしまう前に帰ろう。
私は、気付いたら立ち上がっていた。

「おい。待て!」

私の体を引き戻す様に、平畠さんが腕を掴む。

「やっぱり聞きたく無いです!離して下さい!」

腕を振り払おう力を込めるが、歯が立たない。
涙がポロポロと頬を伝う。

「阿呆!最後まで聞け!」

バイトの時の様な怒鳴り声に、体がピクッと反応する。
私は、ジッと平畠さんの言葉を待った。

「お前なあ。『アルコールのせい』って言っても、何も思ってない奴にキスすると思うか?」

平畠さんは、頭を掻きながら言った。
私は、どういう意味か理解出来ずにいた。

「俺は公私混同するのは嫌いなんだが、お前はそんな事無さそうだからな。」

向かいに座った平畠さんは、私の顎に手を当てるとジッと目を合わせた。

「お前は、俺の事どう思っているんだ?」

平畠さんの瞳が熱っぽい。
顔と顔の距離がどんどん近づいて来る。
私は目を瞑るのも忘れ、平畠さんの整った顔を見つめていた。
< 57 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop