19の夏~私の愛した殺人鬼~
☆☆☆

 紗耶香がその知らせを聞いたのは、専門学校が休みの日曜日だった。


 自宅のリビングで借りてきたDVDを見ながらポテトチップスを食べていた、

ごく当たり前の日常。

 その、矢先の出来事。


 テレビ画面は、ちょうど映画のクライマックスをむかえていた。


 もう少しで凶悪殺人事件の真犯人が見つかる場面。


 口の中のポテトチップスをゴクリ、と喉を鳴らして飲み込み、

上半身を画面へいっぱいに近づける紗耶香。


 長い髪がジュースのコップに入ったことも気付かない。


『この事件の真犯人は……』


 テレビの中で、名探偵がおきまりのセリフを吐いた。


 それと同時に、テレビ横のコードレスフォンが鳴り響く。

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